通天閣入口の上にある【通天閣】の3文字は、作家 藤本 義一氏によって書かれたものです。
文献「通天閣~50年の歩み~」に藤本義一氏が寄稿されていますが、その中に、【通天閣】の3文字を書いた時の念いが述べられています。
戦前、戦中、鉄材供出、焼失、再建と5段階の通天閣を知っている藤本義一氏は、通天閣の3文字を書いた時の心境を「たっぷり筆の穂先に墨を付けて、一度しか書かないぞと自分にいい聞かせて書いた。その文字の中に大阪人情が宿っていますようにと祈って書いた。」と語っておられます。
舞台とか映画、テレビという視覚の世界では、その背景に通天閣が存在しただけで、何の説明も要らずに大阪を舞台にした物語だとわかります。
通天閣が遠景で小さく見えただけで、その下に展開する浪速の人情が漂います。
環境と人間の機微、人生の機微が容易に描き出されることになります。
寄稿文の最後に「大阪城は街よりも歴史を語るものであり、通天閣は街と人を語る大きな要素といえる。」と書かれています。
何気なく眺めている通天閣入口の上にある【通天閣】の3文字には活字では表現できない、街、人間、人生、そして大阪人情が詰まっているんですね。
ここ数年、通天閣には多くの観光客が訪れ、大阪の中でも人気観光スポットになっています。
通天閣より高い建物は他にもあるわけで、多くの観光客は高さを期待して通天閣に昇るのではなく、その下に広がる街や人の大阪人情や大阪らしさを求めているようにも感じます。
藤本義一氏によって書かれた【通天閣】の3文字は、街としての新世界、その中心にある通天閣が将来に向かって歩むためのメッセージかもしれませんね。
…参考文献…
・通天閣~50年の歩み~
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